遠い異国の物語2




※登場人物の説明

クルル(主人公):仙人大学卒業のため旅をしてます。途中で会ったギロロに一目ぼれしました。

ギロロ:旅の途中で出会った人間じゃない?らしい人。特に表記はないけど美人さん。

ガルル:王鄭山の主です。




香のような臭いが辺りに立ち込め、体の自由が利かない。
「本当に初めてか…」
そう楽しげに笑う相手を睨みつける。
「思ったより反応が良いな、
まあ、こちらとしては無反応な人形を抱くより、ずっといい」
そう言って、硬さを取り戻している俺のモノを掴み、
何度目かの絶頂を無理やりに迎えさせられる。
「お前がイク時、すごく締め付ける…
人間とするのも久しぶりだが、悪くないな」
「もう…いいだろう」
かすれた声で、自分を押さえつけている相手、
つまりこの王鄭山の主と呼ばれる妖魔に投げやりに言う。
「俺を汚すのが目的なら、もう完遂できているだろう。いいかげん離せ」
そう数刻の間、俺は犯され続け、
何度も自分のなかに熱いモノを流しこまれた。
俺はうす気味の悪い妖魔のモノが自分を貫く屈辱に
ひたすら耐えるしかできなかった。


長い時間、苦痛と快楽を与えられ、
意識を失うとようやく解放された。
薄暗い部屋で目が覚めると、体は綺麗にされ、寝台の上に寝かされていた。
腕の拘束はそのままだったが、周囲に誰の気配もなく、
拘束を外す、呪詛を唱える。
「この程度の拘束ぐらい外せるんだよ」
身体は痛んだが、それ以上に悔しさでいっぱいだった。
「絶対、ゆるさない。あんな大聖君子の剣なんか使わなくても、
仙人大学始まって以来の天才と言われた俺様をなめるな」

部屋を出て、王鄭山の主を探す。
広い宮殿だったが、ヤツの禍々しい気配で居場所はすぐにわかった。

ドアを開けると中で、下級の妖魔が数人がいて
部屋の中心で王鄭山の主が食事をしているところだった。
「天正、霹靂、松柏…」
奴は呪詛を詠唱する俺のほうをチラと見ながら、食事の手を止めない。

詠唱を続け、炎の塊を手のひらに作り、王鄭山の主を目指し、炎の勢いを上げる。
卓上の料理は瞬く間に火に包まれ、燃え尽きる。
「ほう、人間の分際で妖術が使えるのか、だが、所詮は火遊びだな」
そう言った王鄭山の主は全く無傷だった。
「バケモノめ」
「元気がいい子は嫌いじゃないが、せっかくの料理が台無しになった。どうしてくれる?」

「歳破」
もう一度、呪詛を唱える。炎が部屋全体を包むが、
「そんな子供だましの術が俺に通じると思っているのか」
燃える部屋の中心で涼しそうな顔で応える。
「俺を倒せるのは、お前が持ってきた、あの大聖君子の剣だけだ。
まあ、英雄になりそこなったお前にはもう、使うことができないか…」
冷笑がムカつくが、全く自分の呪詛が相手にきいていないことは明らかだった。

「クルル!」
その時、聞き覚えのある声が飛び込んできて、振り返ると入口に赤い姿が見える。
「ギロロ!」
この山へ向かう途中で逸れたギロロが立っていた。
「大丈夫か?」
「ああ」
「ギロロ、何の用だ?」
王鄭山の主がギロロに話かける。

「ガルル、お前の持っている紫玉をもらいにきた」
「この兄に挑戦して勝てると思っているのか?」
「だから、大聖君子の英雄を待ったんだ」
ギロロの右手には大聖君子の剣が握られている。
「なるほど、確かにその判断は間違ってない。だが、お前はミスを犯している」
「なに?」
「話はこれまでだ。不出来な混血と会話するのも汚らわしい」
そう言うと大蛇が、突如現れて俺達を襲い始める。
「ギロロ、ここは俺がなんとかするから、お前は奴を追ってもいいぜ」
「助かる、クルル」
ギロロと王鄭山の主との間には何か深い因縁がありそうだと思った。
俺に会ったのも、ここへ辿りつくためのギロロの計画だったと思うと少し腹が立ったが、
それでも、惚れた弱みで許せてしまう。

呪詛を使い大蛇を倒し、2人のあとを追うと会話が聞こえる。
「この紫玉があれば、完全な魔になれるそうだな」
「そうだ。お前に半分人間の俺の辛さがわかるか? 人間からは忌み嫌われ、
妖魔の仲間にもどっちにもなれない中途半端な生き方を強制させられた俺の辛さが!」
「同情する気にはなれないな。とにかくこの紫玉はお前ごとき混血に渡せぬ」

満身創痍なギロロの左腕から血が流れ、
王鄭山の主は跪くギロロを余裕の眼差しで見下している。
「英雄はお前を助ける気はないらしい」
そう言って、激しい稲光がギロロを襲う。
俺が間一髪で飛び出し、その雷を跳ね返す。
「ほう、結局逆らうのか? せっかく慰めものとして生かしてやろうと思っていたのに」
「うるさい。ギロロをこんなに傷つけて、お前を許さない」
自分が傷つけられたことよりも目の前で血をながすギロロの状態が心を痛めた。
「まあ、死んであの世で仲良くすればいい」

一面が白い霧に包まれ、息が苦しくなる。
眩暈がし、意識が遠のく。
「クルル」
その時、ギロロの声が聞こえた。
「ヤツの術を破れるのはあの大聖君子の剣だけだ。剣を使え」
「でも…」
徐々に体の力が抜け、頭の奥底が痛む。
「大丈夫だ。お前なら…、剣は英雄の呼びかけに必ず応える。クルル、迷うな。
強く思えば応えてくれる」
ギロロの声は霧の向こうからはっきりと耳に届いた。
俺は自分の意識に集中し、あの剣のカタチを思い描く。
すると目の前に銀色に輝く剣が現れ、柄を握ると意識が冴えてくる。

そして少しづつ剣の光は銀色から金色へと変わり、あたりの霧を晴らす。
王鄭山の主が驚きの表情で俺を見てるのがわかった。


「どう、降参するかい?」
俺がそう言うと、王鄭山の主はその光の眩しさに耐えられず、
苦々しい表情を浮かべながらその場から姿を消す。
すると自分たちを包んでいた宮殿も幻となって次々と消えいく。
靄がかかったような状態に立ち尽くしていると、
上空に紫色の美しい玉が見え、ゆっくり手元に降りてくる。

「今回は引き下がってやる」
その時、王鄭山の主の声が聞こえる。
「その紫玉はお前たちに渡すが、これで勝ったと思うなよ」
それだけを言い残し、主の気配は遠くへ行ってしまった。


「ギロロ」
俺はギロロのそばへ行き、紫玉をそっと差し出す。
「アンタ、これがほしかったんだろう? やるよ」
「いや、クルル。もういらないんだ」
「どうして?」
「俺は人間の血が嫌だとずっと思っていたが、でもクルル、お前と会えて、気持ちが変わった。
この玉を使って完全な妖魔になるより、お前と生きたい」
「…」
胸にグッと込み上げるものを感じながら、ギロロの肩を抱く。
腕のなかの存在が愛おしくてしかたないと思う。
人間とは違う血が半分混じっていても、俺は全く気にならなかった。
戦いに疲れた俺をギロロの温かいぬくもりが癒してくれる。
「さあ、村に紫玉を持って帰ろう。クルル、村の人が祝福してくれる。お前の勝利を…」
立ち上がったギロロの手をしっかり握り、並んで王鄭山をあとにする。

二人の未来は、稜線の上に広がる青い空のように眩しく輝いていると思った。


<おしまい>



注:ご都合主義な展開ですが、突っ込まないで下さい。

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