postcard




残暑の厳しいある日。
宇宙郵便で一枚のはがきが届く。

地球では連日暑い日が続くようだが、変わりはないか?
M12球状星団戦線は佳境に入っているが、私は元気だ。
暑いので体にお気をつけろよ。

大きく「暑中見舞い」と印刷されたハガキに
3行の直筆メッセージ。

M12球状星団はケロンがA級侵略部隊を大量投入している激戦区で、
戦果報告書にはいつもアンタの名前があった。

さすが、「ゲロモンの悪夢」。
どこでもご活躍で、
俺達とはちがって
出世街道まっしぐらだなと思う。

そしてそのハガキを持って、
19000光年離れた彼のいる最前線へ向かう。



「よう、久々だな」

と前線基地の廊下でばったり、再会。

「どうして、ここに?」

ガルル小隊のメンバーが後ろにいるので、
平然とした表情で言う。
そういう人前では隙を見せないところも、変わらない。
「ちょっと用があってさ、うしろの小隊のかた、
あんたらの隊長、少し借りるぜ」
と言って、誰もいないロッカール―ムの一つへ連れ込む。

2人きりになり
「はがき、くれただろう」
と言うと、
「それでわざわざ来てくれたのか」

「前の侵略が済んだら、すぐM12星団戦線に配置されて
お前に会いに行けなかった。だからせめて
なにか、と思って地球の風習に夏に送る挨拶状があると
聞いて送ったんだが…。
会いにきてくれるとは思わなかった」

そう言って唇を重ねてくるガルルを、
少しうっとしく思いながらも、身を任せる。
息苦しい口づけのあと、紫の指が体のラインをなぞり、
キスだけで反応をしめしている下半身へと遠慮なく進む。

「初めてだ」
「なにが」
「お前から会いに来てくれるのが」

そういえばそうだったかもしれない。
わざわざ俺から会いに行くと、
こいつがつけあがるからと思って…。

ロッカー室にある長い椅子に腰かけたガルルの膝の上で、
下半身を弄ばれながら、
荒い息を整えようとするが、
相手の指が後ろの秘めた箇所へと進むと
内から湧き上がる欲望が抑えられなくなる。

5つのワームホールを経由して、
数千光年を旅してきた理由を一瞬思い出したが、
言いたいことは終わってからでいいと考え、
本能のおもむくまま、ガルルの体温と匂い、
そして与えられる快楽の波に溺れた。



「で、このはがき」
と帰り際、地球から乗ってきた船の前で言う。
「俺のいる地球ではもう処暑だぜ。誰にきいたか知らないけど、
暑中見舞いは立秋までに出すのが礼儀だ」
「それを言いにわざわざ?」
「そういうのが気になるの、俺は」
「これからは気をつけよう」
気をつけるか…、この紫は任務以外では意外とボケてるから、
来年もきっと同じような失敗をするかもと危惧するが、
そうしたら、また前線まで会いに行く理由ができていいかもしれないとも思う。

「じゃあな」と言って、
頬にキスをして船に乗り込む。
厚い黄色いメタンの雲をぬけて、
1900光年先の地球へ帰る船の中から
見送るガルルの姿を振り返りながら
「愛してるぜ」とひとこと言って、超光速度へ一気にスピードを上げる。
広い銀河の片隅で、
今度はお前が会いにきてくれるのを待っている。

俺は身体を一つに重ね、「愛してる」と何度も言ったガルルの声を思い出しながら、
何ひとつ未練なく、
M12球状星団をあとにした。





END

  
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甘いガルクルが急に書きたくなって…。
あまりエロくはないですが、一応裏っぽいので   
裏に置きます。

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