fadeless





宇宙人街で買い物をしようと考えて出かけたら、
通りの反対側にギロロ先輩をみかけた。
その時、先輩は急いでる様子だったので、あえて声をかけなかった。
ただ人ごみのなか、通り過ぎる姿を目で追いながら、
遠目でみても赤い色が鮮明で、
やっぱり俺好みのいい男だと思った。



「赤い彗星」は確か隊長の好きなアニメのキャラクター、
「赤い悪魔」はマンチェスターユナイテッドの別称、
赤という色はなにか特別なイメージがする。
そう思いながら、
自分の隣で無邪気に眠る赤い体色の恋人の頬に口づけする。
「どうした?」
目を覚まして、低い声で問いかける。

「別に…」
見惚れていたなんて言えるかよ。

知っているかい、先輩。
赤色を選ぶ人間は、慎重さに欠けるタイプだそうだ。
俺も今まで、必要以上に注意深く生きてきたつもりだったけど、
どこをどう道を間違えてしまったのだろう。

「クルル、もう少しだけ、ここにいていいか」
と言う先輩に、
「好きなだけいてもいいぜ」
と答えて、自分の分別が及ばない眼の前の赤い戦士にそっと唇を重ね、
「確か先輩の通称も《悪魔》だったな」
と小さくつぶやき、赤い背中に手を回す。





「クルル、何かあったのか?」
と腕の中で言うので、正直に答える。
「何もないぜ。考えていただけだ、いろいろと」
先輩は心の底を見透かすような瞳で俺を見つめて、
はっきりと言う。
「お前は何事も複雑に考えすぎだ。お前のそばにいつも俺がいる。それで十分だろう」
確かにアンタの言う通りに俺という存在は複雑すぎる。
意外と単純バカなアンタのほうが、
俺よりずっと広く世界を見通せているかもしれない。


とくに意味もなく、
「昨日、先輩を宇宙人街でみかけたぜ」
と言うと、
「ああ、欲しい本の発売日で買いに行ってたな」
と返事をする。
駆け引きのないこういう会話もシンプルでいい。
仕草や言葉や、そしてその鮮やかな赤…、全部が堪らなく魅力的だと思う。


何も言わず、再び口付けし、
また2人でシーツの海へ泳ぎだす。


外ではわずかに冷気を含んだ西風が
色づく前の緑の葉を揺らしながら秋の訪れを告げていた。
柔らかい秋の日差しが庭の芝生を照らしている午後を
地下深いラボのベットルームでこうやって自堕落に過ごすのも悪くない。


END

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久々にクルギロです。やっぱり攻めクルルもかっこいいって気分で、書いてみました。
そういえばもうすぐ我が家も開設一周年です。
特になにもしないですが、個人的には飽きっぽい自分が同じジャンルにずっとハマってて少し不思議な感じです。   
クルル好きは変わらないので、これからも気ままに続けていきたいと思います。

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