calling




名前を呼ばれるとドキッとする。
クルルは普段、先輩、ひどい時にはオッサンと呼ぶ。
そういうのに慣れていると、
時々、ギロロと呼ばれと何となく落ち着かない。
ただでさえ、緊張するベッドのうえで、
そんな風に「ギロロ」と優しく名前を呼ぶなんて反則だ…。

そういえば、長い間クルルの人を食ったような口調が苦手だった気がする。
でも今は…。
「二人で今度、花見に行こうか」
キスをしたあと、クルルが話しかける。
「どうした、急に?」
「もうすぐ春だしさ、サクラ好きだろ?」
クルルの一言、一言が今は耳に不思議なぐらい心地いい。
「いいぞ」
と俺が答えると、
「じゃあ約束だ」
と言って、もう一度唇を重ねる。
クルルの甘くて、長い口付けで胸が一層高鳴るのがわかった。

どうして苦手だと思っていた相手と肌を合わせられる仲になったのだろう。

オッサンでもなく、先輩でもなく、「ギロロ」と呼ぶクルルの声が聞こえ、
また口付けを交わす。

クルルの指がゆっくりと下のほうへと降りていき、
確かに反応を示している部分へ移動する。
キスだけで、感じて硬くなっている俺自身に優しく触れられ、
「あ…」
思わず声が漏れる。

クルルが、
「俺、先輩の声が好きだ」
と言う。

それはさっきまで、俺が考えていたことだと思いながら、
どう答えていいか悩み、
「クルル…俺も」
とだけ言うのが精いっぱいだった。

両足を持ち上げられ、蕾にクルルの硬くなったモノがあてがわれる。

「何考えてるか知らないけど、俺が入っているときは俺のことだけ考えてくれよな」
と言って、俺に挿入してくるクルルの熱を感じながら、
気持ちの変化に戸惑っている自分自身に何か大事な答えを見つけようと
その時、俺は可笑しいぐらい必死になっていた。


次の日ー。
いつものような侵略会議に、いつものように出席する。
ケロロの話すふざけた作戦にイライラしながら、思わず、
「ケロロ!ふざけるにもほどがあるぞ」
と大きい声を出すと、
ビクッとするケロロに、驚くタママ二等兵、そしてクルルは
「おっさん、せっかく隊長が作戦を提案しているんだ、聞いてやれよ」
といつものシニカルな笑みで応える。

また「オッサン」って言われて、少しショックだったが
クルルの声は昨日の夜と変わらず、
どんな場面でも俺に心地よく耳に届く。

一瞬、密事の時間に与えられた優しい言葉の数々を思い出す。

「愛している」とか「好きだ」とか
惜しみなく言う年下の恋人を俺は周囲の目も気にせず見つめ、
自分はずっと前からこの人を食ったような態度の生意気な後輩が
好きだったのかもしれないとその時、ようやく気づいた。


end

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短めです。
ブログに載せたショートだったのを少し伸ばしてサイト用に加工しました。
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