COLOR



朝、目を覚ますと隣に先輩の姿があった。
二日酔いで頭が痛いと思いながら、ぼんやりと昨夜のことを思い出そうとしたが、
かなり酔っていたため、どうやってここまで戻ってきたのか思い出せない。
宇宙人街の新年会に出席して、飲み過ぎたところまではなんとか覚えている。

「先輩、朝だぜ」
とりあえず、いつもなら俺よりずっと早く目を覚ます、先輩を起こす。
「クルル…」
先輩は目を覚まし、俺の顔を見ると急に反対を向き、
「その…昨日のアレは…」
とブツブツ言う。
「はあ? 昨日は飲み過ぎてよく覚えてないんだけど、俺、何か気に障ることでもした?」
先輩はくるっと俺のほうに向き、
「覚えてないって? 」
「ああ、宇宙人街で酔っ払って、朝、目が覚めるまでの記憶が曖昧で…」
「昨夜、俺に何したのか、覚えてないのか?」
先輩はかなり怒った口調で、俺にそう聞いた。
「悪い。全く覚えて…」
セリフを言い終わる前に思いっきり殴られた。
先輩は、
「貴様、最低だ」
と言ってラボを飛び出して行った。

一人、残させた俺は昨日の夜、何があったか調べるため監視カメラのデータを見ることにした。
AM1:44
二人がラボに入ってくる。
「クルル、しっかりしろラボに戻ってきたぞ」
先輩が半分寝ている俺を抱えて、押入れに乗せる。
「水でも持ってこようか?」
心配そうに俺を見る先輩…優しくて、相変わらずかわいいと思いながら、監視カメラの映像を見る。
「いや、こっちにきてくれ」
昨夜(正確には今日の日付だが)の俺はそんな先輩の腕をとり、
押入れに強引に引き入れ、抱きしめる。
そう言えば昔、酔うと人に抱きつく癖があると言われたことがあったような気がした。

「先輩、抱いていい?」
そう訊く俺に、
「もう抱いてるだろう?」
と答える先輩。
「違う意味のほうだぜ」
そう言うと、赤い身体を組み敷き、キスをした。

まったく記憶のないキスシーンを見ながら、心臓の鼓動が速くなるのがわかる。
「やばいぜ、この展開…」
一人言を呟きながらも、画面から目が離せない。
「やめろ」
先輩は抗うが、
「やめろと言われてやめるようなヤツじゃないぜ、俺は」
と言って、先輩のベルトを外し、無理やり赤い肌に口づける。

「俺ってサイテー」
結局、監視カメラの映像でことの一部始終を確認した俺は、自分の行動に呆れてしまった。
「酔っていたからごめんじゃ、許してもらえないだろうな…」

せっかく、一目ぼれして、偶然にも同じ部隊になって、いろいろあったけど、
仲良くなれたと思ったのに…。
なんとか、先輩に昨日のことを許してもらって元のように仲直りできないかと考える。
ケロン一、いや宇宙一の頭脳を駆使して考えるがいい案は全く浮かばない。
「うだうだ考えてもしかたないぜ。当たって砕けろだ」
と思い、庭にあるテントへ向かう。

「入っていいかな」
テントの外から中にいる先輩に話しかける。
「貴様の顔なんてみたくない」
テントから拒絶の言葉を聞き、しかたなく外から話しかける。
「俺が悪かった。ごめん。ひどいことして」
「クルル…」
何か言いたそうな雰囲気を感じ、テントの前で次の言葉を待つ。
「…本当に覚えてないのか?」
先輩の質問に正直に答える。
「本当に酔っていて、覚えてない」
「あんなことをしておいて、覚えてないなんて酷過ぎる」
キツイ言葉が胸に突き刺さるようだ。
「先輩の言うとおりだ。俺も自分が自分でいやになるぜ。心底悪かったと思ってる」
少し時間を置いてほうがいいと考え、ラボに戻ろうとすると、テントから先輩が出てきて、俺を呼びとめた。
「クルル」
「何だ?」
振り返り先輩を見ると、赤い身体がそこだけ冬の太陽下、色彩豊かに煌めいている。
この情熱的な赤に惚れたんだったと思う。

「俺はお前のことが好きだし、その気持ちは変わらない。ただ…」
「ただ…何?」
俯いて、次のセリフを探す先輩より先に答えを出す。
「今から仕切りなおそうぜ」
「何?」
先輩へ一歩一歩近づき、目の前で視線を合わせる。
「ラボでもう一度、しよう」
そう言って、リモコンを出し二人をラボの押入れに転送する。

「クルル…」
困惑する先輩を抱きしめ、
「酔った勢いだったけど、俺はずっと前から先輩を抱きたかった。愛してる…大事にするから」
できるだけ、正直に自分の気持ちを伝える。普段、嘘ばかりだけど、
こんな時ぐらいは本音を聞いてほしい。
「俺も…」
先輩の戸惑いが体を通じて伝わってくるが、拒否するつもりがないこともわかる。
「愛してるぜ、先輩」
何度も同じ言葉を繰り返す。言葉は惜しむものじゃない。
先輩は俺の背に緩やかに腕を回し、
「勝手にしろ」
と小さい声でつぶやいた。
「勝手にさせてもらうぜ」
俺はそれを了承の意にとり、口づける。
初めての口付けに似た胸騒ぎを感じながら、ゆっくり唇を重ねると、先輩の熱すぎる体温は思いのほか心地良く、俺を魅惑的に誘っている気がした。

その日、燃えるような赤い身体をかき抱きながら、
決して手に入らないと諦めていた眩しい存在が自分と一つになる歓びを全身で感じた。


end
  
  
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 3000打記念に二人の初を妄想してみました。 
 勢いでそういう関係になって、でもラブラブって状態に萌えます。 

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