Melon



<18歳以下の方はご遠慮ください>




最近、ラボが開放的になったと思う。
以前は、誰も近寄らなかったし、実験だなんだと言って呼び出される俺以外、ラボにわざわざ訪れる者はいなかったのだが。

昨年辺りから、ケロロが掃除機や自分のソーサーを持ち込んで整備したり、自作で侵略兵器を作ってみたりと、開発室で作業することが多くなった。
タママも先日の『クルルズ製菓謹製ガム』の一件から、自作の菓子の木作りにはまっているらしく、入り浸っていることが多い。
嫌なヤツだの引きこもりだの偏屈だの、さんざ言われていたクルルも、最近はなにかと社交的な感じがしないでもない。
そんな雰囲気の中、俺やドロロもまた開発室を借りることがあり、誰もが気軽にラボに出入りできるようになって、小隊メンバー同士のコミュニケーション能力も高まってきた。
自然と小隊全体の結束力も強くなり、はっきり言うと嬉しい。
嬉しいのだが…。
 
今までのようにラボにふたりきりになる、ということがほとんどと言っていいほどなくなってしまったように思う。
ケロロは昼夜問わず、開発室にこもることも多い。
最近はガンプラ作りでさえ、開発室を利用しているようだ。
さらに、俺が開発室を利用しているときに限って、携帯ゲーム機を使用して「暗黒ピクトチャット」なるものをしようと、クルルを誘いにくる。
わざとではないと思うが、そういうことが重なり、以前にも増して、クルルとふたりきりで過ごす時間が少なくなった。
 
クルルもまた、昼間はケロロの遊びに付き合ったり、タママの開発に力を貸したりしているため、自身の作業は夜中に行うことが多いようだ。 
 
いったいいつ寝ているのか、いつか身体を壊しやしまいか。
 
そんなことが気になって、銃のメンテナンスも気軽には頼めなくなっていた。
そして、他の隊員が頻繁にラボに出入りする中、俺だけは、なんとなくラボから足が遠のいていった。
 
 
 
 
『センパイ、今ヒマ?』
 
もう寝ようと、毛布を広げた途端、クルルからの通信が入った。
もう寝るところだ、と答えると、クルルは少し間を置いて、呟くように言った。
 
『ちょうど今、ゴチャゴチャした作業が終わったトコ。
最近、センパイの銃のメンテしてなかったよな。
ちょいと見てやるから、持って来いよ。』
 
「おまえ……、ここのところ、昼間はケロロたちに付き合っていて、夜に徹夜で作業をしていただろう。
少し眠った方がいいんじゃないのか?」
 
そうだ、俺の銃のメンテナンスなど、いつでもできるではないか。
休めるときぐらい、ゆっくりと休養を取った方が…。
 
『……いいから持って来い、って。』
  
クルルの声は、心なしか怒っているように思えた。
やはり、疲れているのだろう。
それなのに、わざわざ声を掛けてくれたのだからと、とりあえず簡単にメンテナンスできそうな銃を一丁だけ持って、ラボに向かった。
 
ラボに着くと、いつものようにシャッターは開放されていた。
だが、ラボ内は真っ暗で、コンソールのモニターだけが、暗闇にぼう…と浮かび上がっている。
 
「クルル…?」
 
声を潜めて、ゆっくりとラボの奥へと歩を進める。
 
ガシャン!……カチャ。
 
突然、背後のシャッターが閉められ施錠される。
驚いて振り返るが、クルルの姿はない。
 
「開発室か?」
 
俺は独り言を呟くと、開発室に向かった。
案の定、開発室の扉は半分開きっぱなしになっていて、中から柔らかな光が漏れている。
中を覗くと、タママの自作らしい木の横で、クルルがなにやらデータを取っていた。
 
「クルル、疲れてるとこ、スマン。」
 
そう言いながら近付くと、クルルは目の前の木の枝に手を伸ばした。
その木にはたくさんの小さな飴玉がぶら下がっていて、ひとつをぷちっと枝から千切ると、包みを解いて俺に見せた。
 
「あーんしてみ。」
 
「なっ…」
 
「心配ねえよ、ただの飴玉だ。」
 
おそるおそる開けた俺の口に、クルルはぽいっと薄黄色の飴玉を放り込んだ。
口に中でゆっくりと味わうように舐めると、ほのかにバナナの味がした。
だが、思ったより甘くない。
 
「あまり甘くないな。」
 
「んー、やっぱり…、糖分が足りねーみてえだな。
俺らにはちょうどいい甘さだけど、タママ用だったらもっと甘くしねえとな。」
 
クルルはそう言うと、木の根元に3本のアンプルを挿し込んだ。
そして、アンプルが吸収される前に、もうひとつ飴玉を千切って俺に手渡した。
赤い包みの中には、赤い飴玉が入っていた。
ほんのりとイチゴの香りがする。
 
「センパイ、食わしてくれよ。」
 
俺の目の前で、クルルは口を開けて待っている。
俺はその小さな赤い飴玉をクルルの口に入れてやった。
クルルは少し酸っぱそうな顔をしていたが、「あー、イチゴだ。」とか言いながら飴を味わっている。
 
「なー、センパイが食ってるヤツ、バナナ味だろ?」
 
不意に訊ねられ、「そうだ。」と答えると、クルルは俺の耳元に唇を寄せて囁いた。
 
「センパイのバナナ味と俺のイチゴ味、一緒に食うとさ、メロンの味になるんだぜ。」
 
驚いてクルルの方を見ると、クルルは俺の唇に唇を押し当てた。
クルルの両手は俺の身体に回され、重なった唇の隙間から、丸く暖かい物とクルルの熱い舌が俺の口内に押し入れられる。
舌先に酸味を感じた。
元々、俺の口に中にあったほの甘い飴玉と絡まるように、クルルの舌が俺の舌に絡みつく。
舌の動きに釣られて、ふたつの飴玉は口の中でくるくると動き回っていたが、唇が解放されたときには既に溶けてなくなっていた。
 
「ちょっと、メロンの味になったよなァ。」
 
クルルはそんなふうに言っているが、俺はクルルから受けるキスや舌の動きに戸惑い、飴を味わう余裕など全くなかった。
ただ、久しぶりのクルルからのキスに、身体が熱く火照り、目が潤んでしまっていた。
そして両手は、無意識にクルルの身体を包み込んでいる。
もう、俺の中でスイッチが入ってしまったのだろう。
 
「なんかすげえ久々。」
 
そんなクルルの言葉を遮るように、再び唇を重ねた。
縋りつくようにクルルの背中に両手を添わせる。
ひやりとしたクルルの身体の感触が懐かしく、もっと俺の熱を奪って欲しいとさえ思った。
重ね合わせた唇の角度を幾度となく変えて、深く甘く、絡み繋がる。
僅かな隙間から、どちらのものかわからない吐息が漏れた。
唇が離れると同時に、激しいキスで身体中の力が抜け切った俺は、クルルの胸の中に崩れ落ちた。
そんな俺の身体を抱き留めながら、ゆっくりと床に横たえさせる。
そして、クルルは柔らかい唇を、瞼や頬から首、胸…と這わせ、同時に軽く吸い寄せた。
 
「…あ、……んっ」
 
敏感な箇所に触れるたびに、身体が強張り、悩ましげな声が漏れる。
そのまま唇が、身体の中心の、いちばん熱を纏った部分に到達すると、もう、声を押し殺すことができなかった。
太腿の内股を押さえ付けられ、あらわになった俺自身の先端をつつくように舌先で刺激される。
じわじわと先走りが染み出して、零れ落ちる前にちゅうっと吸われると、自然と腰が上がった。
 
「や、……あ、あっ」
 
クルルはそそり立った俺のモノを片手で扱きながら、舌先をひくついた俺の後口に挿し込んだ。
硬く緊張を保っていた蕾は、クルルの舌で柔らかく解きほぐされる。
途端に、身体のいたるところが疼き出した。
ここにきて初めて、俺のほうがクルルを求めていたのだと思い知らされる。
身体だけではない。
心も含め、俺の持てるすべてがクルルを欲している。
もう、舌だけでは我慢できない。
クルル自身で、身体の隙間を埋めて欲しくて、必死になってクルルのヘッドホンに手を伸ばした。
 
「く、くるる…ッ」
 
「ん、俺も、挿れてェ」
 
クルルは俺の股間から顔を上げ、俺の両足を抱え上げると、ゆっくりと俺の身体に圧し掛かった。
クルルのモノが俺の身体に挿入ってくるのがわかる。
首に回した両腕で、力いっぱいクルルを抱き締めると、耳元にクルルの熱い息が降りかかった。
腰をぐりぐりと押し付けられ、その度に下肢に言いようのない快感が宿る。
お互いの身体で圧迫された俺のモノは、今にも熱を吐き出そうとしている。
 
「んん、も……逝っちまいそ」
 
「……きて…くれ」
 
搾り出すように言葉を発したと同時に、クルルのモノが俺の最奥で弾けた。
その刺激を受け、俺もまた昇り詰めた。
 
 
 
 
「あんたさァ、なんか俺に遠慮してねェ?」
 
クルルは俺の上から身体を退けて、俺の横に身体を寄せて寝転がると、ぽつりと零した。
別に、遠慮していたわけではない。
だが、他の者がクルルを頼ってラボに集まってくるのを見て、クルルとこういう関係にある俺だけが、クルルを独り占めしていてはいけないという思いがあったことは確かだ。
それだけではない。
実際、クルルがケロロやタママと仲良くしているのを見ていられなかった、というのもある。
それが、醜い感情だとわかっていたからこそ、あえて、見ないようにするためにラボに近寄らないようにしていたのだ。
 
「別に遠慮など…。」
 
「だったら、何。
俺に会いたいとか思わねえの?」

少し怒ったような拗ねたようなクルルの口ぶりに、思わず笑みが零れた。
クルルもまた、ラボに来ない俺のことを気にしてくれていたのだ。
 
「ちッ、何がおかしいんだよ。」
 
「……明日も、来ていいか?」
 
目を合わさずに、小さく呟いた。
俺の言葉で、クルルは俺の気持ちをすべて理解してくれたのだろう。
クルルは、再び俺の身体に圧し掛かると、耳元に唇を寄せた。
そして、優しく囁く。
 
「バーカ、今夜は帰さねえよ。」
 
ゆっくりと目を閉じると、唇に柔らかな暖かさが宿る。
少し汗ばんだクルルの身体を強く抱き締めた。
 
「さっきさァ、久しぶりだったんで焦っちまって、あんまりかわいがってやれなかったよなァ。
次はもっと、気持ちよくしてやっから。」
 
クルルはそんなふうに言いながら、ククク…と笑った。
あからさまな言い方に、思わず真っ赤になって睨み返すと、傷跡をペロリと舐められた。
俺は、こうしているだけで、充分、満たされた気持ちなのだと。
喉まで出掛かって、口を噤む。
多分クルルは、俺が何も言わなくても、すべてわかっているだろうから。
 
どちらともなく、唇を繋いだ。
甘いキスが引き金となって、そのまま、溶け合うように、混ざり合うように、ふたり、重なり合った。
朝が来るまで。
 
 
 End
 
 2008.12.03
 
 
  「urbanity」・saraさまへの相互記念です。
  お題は『ラボでラブ甘なクルギロ(SSでもイラストでも)』でした。
  うわあー、ホントに甘くなってしまったー。でもすごく甘いのが書きたかったのです。
  ちょっとエロさ控えめですが、大丈夫でしょうか…。saraさま、受け取っていただけますかー?
  こんな私ですが、どうか今後ともよろしくお願いします!
 
 
  ちなみに、イチゴ+バナナでメロン…というのは、先日、オヤツにもらったタブレットでそういうものがあったのです。
  私は食べてないので、ホントにメロンの味になるのか、わからないのですが…。

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   前川ハルマ様より相互記念SSをいただきました。
   少し遠慮がちな伍長さんがすごくかわいくて、  
   こんな素敵な作品をいただけて、とてもうれしいです。
   前川ハルマ様、本当にありがとうございました。(sara)
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