愛し愛される振りのラブゲーム

 
耽溺する五題より- rewrite


これまで熱心に書いてきたケロンアーマー開発のレポートを全て捨てて、
シェルフに並んでいた本をとともに簡易焼却炉を使って、一気に燃やしてしまった。
「もういらないと思ってさ」
とクルルは淡々と作業していた。

ラボにあった資料が処分されてから数日後、
軍の情報を漏えいした罪で少佐に逮捕状が出た。 
当の本人はさっさと行方を暗まし、
憲兵がラボに残っているわずかな資料を証拠品として持って行ってしまった。
私も尋問を受けたが、何も知らないと言うとすぐに解放された。

行方不明になって3日後、少佐からの暗号入りのメールが届き、
凝りに凝ったその暗号をなんとか解き、潜伏先に会いに行く。
カラマツの林に囲まれた静かな別荘に彼はいた。
「けっこういい家だろう?」
部屋に入ると、暖炉のある豪華なリビングでクルルはソファに腰掛け
いつものように黄色のマークのついているモバイルを前に指を動かしていた。
そんな様子がラボにいたクルルと変わらず、
不自然なラボの整理といい、
事件はすべて計算されたものだったのだろうかと思う。

「心配しましたよ」

「そうだな。自分勝手な俺さまに振り回されるのはもうイヤになった?」

「嫌いになるはずないでしょう?」

「そう」

誘うようにこちらを見るので、何も言わずソファに押し倒して、キスする。
長いキスを終えたあと、
「ベッドルームは2階にあるけど、いく?」
と聞くので、
「ここでしましょう」
と答える。
革のソファーのうえで体を密着させ、何度もキスを繰り返す。

「どうしてこんな事件を。理由を教えていただけませんか?」

「退屈だったからさ」

「下手すれば銃殺刑ですよ」 

「すでに弁護士も頼んであるし、俺のシナリオでは降格処分の予定だ」

「せっかくここまで上手くやってきたのに」

「俺は軍部の上を目指すゲームに飽きたからリセットボタンを押した。それだけだぜ」

本部では血眼になって行方不明の少佐を探しているのに、
本人は自分のシナリオに沿って、新しく思いついた降格ゲームを楽しんでいるようだった。
「そうやって、いつか私たちの関係もリセットする予定ですか?」
聞きたくはないけど、つい思った疑問をぶつけてみる。
クルルはじっと私の顔をみつめ、
「リセットしてほしい?」
と訊く。
「冗談を…」
深く口づけして黄色の身体を抱きしめ、
その肌を味わうように隅々までしつこいぐらいに愛撫する。
 
指を奥のほうへと進めると、
「あっ…やめ…」
か弱い力で上に乗っている私の肩を押して抵抗する。

「わざと痛くしているんですよ。ちょっと強引にされる方が感じるでしょう?」
と内部に入れた指を乱暴にかき回す。
苦痛と官能を同時に感じているような表情を見せるクルルの唇を塞ぐと
黄色の頬に涙が一筋流れ落ちる。

「泣くほどいいですか?」
と訊く私に、
「俺が好きで好きでしかたないだろう、ガルル?」
と組み敷かれている黄色は質問に質問で答える。
返事の代わりにクルルの奥底に深く自分自身を沈め、頬の滴をやさしく指で拭う。


「リセットする気が起きないほど、愛してあげますよ」
と自分の偽りのない言葉に、
腕の中の黄色が何か答えるのがかすかに聞こえたが、
もう会話を楽しむ余裕はなく、
熱に溺れる黄色の身体を揺さぶり、ただひたすら快楽を追い求める行為に没頭した。


end


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すっかり恋人同士な感じなんですが、いちおう「ゲーム」という言葉をキーワードとして書きました。  
降格事件の前後はいろいろ妄想できて楽しいです。
 
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