遠い異国の物語



 <注意!!>クルギロでガルクル要素もあるパラレルです。

  
  (白井恵理子先生のデビュー作を元に書きました。ダブルパロのような設定なので、苦手な方はパスしてください)
  
  
  俺は仙人大学の卒業試験として王鄭山の紫玉を取りに行くことになった。
  かったるいが、この試験をクリアしないと卒業させてもらえないらしい。
  しぶしぶ西方の王鄭山へ向かう。
  
  途中立ち寄った村で王鄭山の情報を仕入れる。
  なんでも山の主は凶悪な妖魔で、
  何人もの人物が伝説の紫玉を目当てに山に入ったが、誰一人帰ってきた者はいないとのことだった。
  村人が言うには王鄭山の妖魔を倒せるのは大聖君子の英雄だけだと。
  
  へえ何か嘘くせえと思いながら、その君子の証となる剣とやらを見せてもらうと
  その剣が急に輝きだし、村人に、
  「剣が反応している、あなたが大聖君子の英雄だったんですね」
  と勝手に決め付けれてしまった。
  
  それで、その押しつけられた剣を持って、王鄭山に向かう途中の山中で不思議な気配を感じた。
  明らかに人間の気配と違う妖気に
  「さっきから俺を見てる。お前が、例の王鄭山の妖魔なのか?」
  と警戒しながら、それでも気易い感じのノリで木の上の気配に話しかける。
  
  「ちがう。俺は儀山のギロロ。王鄭山はまだずっと奥だ」
  木の上から飛び降りてきた赤い姿を凝視する。
  敵意はなさそうで、多少警戒レベルを下げる。
  「人間がこんな山奥に何のようだ?」
  とギロロと名乗った赤い姿が尋ねる。
  低くよく通る声が胸の奥に響く。
  「王鄭山に用があってさ。あんた、ここの地元なの?
  だったら案内してくれない?」
  「俺が人間じゃないと知ってて頼むのか?」
  「危害を加える気があるかないかぐらいわかるぜ」
  「妖魔を恐れない人間とは珍しいな。面白い。案内してやろう」
  そうして、旅の途中で人間とは違う気配の赤い男と知り合いになった。
  
  夜になり、野宿するために火を熾す。
  「大学の卒業試験なんだよ」
  と世間話のついでに、王鄭山へ向かうようになった経過を話す。
  普段、他人となかなか打ち解けられない俺だが、
  なぜか目の前の赤い妖魔には寛いで会話ができる。
  「その剣は…」
  ギロロが俺の持っている剣に興味を持つので、ざっと村で遭ったことを話す。
  「というわけさ…。それよりアンタさ、俺のことどう思う?」
  赤く炎に照らされたキツイ眼差しがあまりに扇情的で、
  体を引き寄せて迫る。
  「ちょっと…」
  困惑するギロロを地面に伏せて、口づけする。
  「俺、アンタに一目ぼれかもな」
  そう言って、体に触れようとすると。
  「お前、その剣が使えなくなるぞ」
  「ええ?」
  「村人は言わなかったのか?大聖君子の剣は
  汚れなき清らかな人間にしか扱えないという話を」
  「つまり、ここでアンタとコトをしたら使えなくなるってこと?」
  「たぶん、そういうことだ」
  俺はくだらない卒業試験なんかより、目の前の赤い妖魔とあんなことやこんなことをするほうが
  ずっと興味深いと思ったが、ここまで来て、紫玉をあきらめるのも癪だと考え、
  赤い身体に触れていた手を離す。
  「しょうがないな。さっさと王鄭山の主を倒して、イイことの続きがしたいぜ」
  と言って、その夜は次の日に備えて大人しく寝ることにした。
  
  次の日、
  王鄭山に入ると途端に下級の妖魔に囲まれ、戦闘が開始される。
  しかし、大聖君子の剣を鞘から抜くと、たちまち敵が一掃され、
  「本当にすごい剣だったんだ。確かにこれなら相手が誰でも倒せる気がするぜ」
  とちょっとビックリしながら、剣を収める。
  「王鄭山の主はこんな下級レベルとは違う。油断するな」
  とギロロが言う。
  「アンタさ、主のこと知ってるの?」
  と訊くと、
  「ああ、アレは…」
  と言う途中で声が聞こえなくなった。
  あたりが白い霧に包まれ、すぐ近くにいたギロロの姿も見えなくなる。
  「おい…」
  呼びかける声に返事もなく、急に眩暈に襲われ、意識が失われていった。
  
  
  目が覚めると大理石の床に後ろ手を縛られて転がされていた。
  見渡すと広い部屋に人影はなかったが、
  急にどこからか声が聞こえる。
  「お前が俺に挑戦してきた愚かな人間か」
  目の前に姿を現した紫色の妖魔の禍々しい気にあてられ、手の
  ひらにじわっと汗が滲む。
  「この剣に選ばれたそうだな。確かに私を倒せるかもしれない
  この剣の力を使えば。だが、使用条件は限られている…
  確か汚れなき清き人間だったな。面白い条件だな。
  汚れなき人間だけしか扱えない剣なら、選ばれた人間を汚してしまえばいいだけだ」
  そう言って、ゆっくり近づいてくる。
  
  「せっかく俺が直々に相手をしてやるのだから、感じてみせろ」
  
  
  つづく…
  
  
  ****************
  長くなったので、前後編にします。話はできているので、
  後編もすぐUPできると思います。
  
  
  果たしてクルルは紫の魔の手から逃れることができるのか…乞うご期待?


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