in love



今日の会議はいつも通りの意味のない会議で、
いつも通りに言い争う隊長とギロロを見ていた。
よくあきないねえ
と思いながらも、自分の赤に対する重たい思いも
もう何年ごしかと自嘲した。

「先輩」
「なんだ」
「あんたとしたら楽しそうだな」
「はあ」
「いや、こっちの一人言」

いちいちABCとか段階踏むのも面倒くさいし、
俺だって、いますぐどうこうしたいって訳じゃない。
このままラボに攫っていこうかなんて考えるが、実行はしない。
俺ってば臆病者、拒絶されるのが怖いなんて。

なんでも今まで思い通りに生きてきたのに、
この目の前にいる、うるさくて、暑苦しいオッサンに
俺の生き方すべてを見事に180度引っくり返された気分。

地位だって、お金だって俺の頭脳があれば何だって簡単に手に入ってきた。
恋人だって不自由したことはない。
若くして少佐になったんだ。変わり者と評判でも、周りがほっとくわけないだろう。
まあ、ちやほやされるのもいいかげん飽きた頃、アンタに会ったんだ。

第4次アウターリム終戦式典で反政府によるテロリストの攻撃があって
あの日、式典の警備にあたっていたアンタが、
傷だらけになりながら、民間人を助けているのを見たんだ。
馬鹿なテロリストグループは、最初上層部を狙っていたが、シールドに
攻撃が跳ね返されると、民間人に向かって発砲した。

50人ほどのグループはすぐにオッサンはじめとする第8小隊によって殲滅させられた。

「あの赤い機動歩兵の名前知ってるか?」
と隣のSPに聞くと、
「ギロロ伍長です、有名ですよ、赤い悪魔って呼ばれています」
「ああ、その通称はきいたことあるな」

救急隊に手当を受けながら、怪我をした他の隊員とともに引き上げる
姿をずっと目で追っていた。

今考えると、一目惚れだったな。
敵の弾道を民間人から逸らし、相手を一人づつ確実に
倒していく、強さにインパクトを受けた。

まさか同じ隊に入って、こんな辺境に一緒に配属されるなんて不思議な運命だ。

まあ、オッサンがナツミナツミうるさいのさえ我慢すれば、
けっして居心地は悪くないし、このまま怠惰に暮らすのもいいだろう。

いつか、あの鈍感な赤が俺の気持ちに気付く日がくるのを
のんびりと気長に待つとしよう。





  END
*****************

曹長の片思い(その2)ということで…。
戻る