告白(前編)



風邪を引いて寝込んだ。淡いグリーンの壁、グリーンのカーテン…
基地の医務室で目を覚ました。
どのくらい眠っていたのだろう。熱のせいか頭がぼんやりとして働かない。
「先輩、お目覚めかい?」
白衣を羽織ったクルルが部屋に入ってきた。
「ああ、悪いな」
「何が?」
「ずっとついていてくれただろう」
眠っている間もクルルの気配を近くに感じていた。

「いまは何時だ?」
「もうすぐ午前10時だぜ」
昨日、日向家の庭で
「先輩、顔色悪いぜ、風邪だろう。テントじゃ寒いから基地の医務室使えよ」
とクルルに言われ、
「俺は風邪ぐらい平気だ」と言ったのに、無理やりここへ転送され、
薬と水を渡され「これ飲んだらさっさと寝ろ」と言われた。
貰った薬を飲むと急激に眠気に襲われ、その後は覚えていない。
ただ隣にクルルがいたのは分かった。

「スターフルーツをタママが買ってきてくれたぜ」
クルルの右手にはスターフルーツの乗った皿があった。
「すまん、食欲がない…」
と言ったら、少し困ったような表情をして
「じゃあ、一口でいいから食べてくれないか? 昨日から丸一日何も食べてないだろう」
そう言えば、食欲がなく、水ぐらいしか飲んでいない。
クルルはスターフルーツを一口サイズに切った。いつもの厭味な陰湿な態度とは違い
病人を労わるような雰囲気で…。

「なんか変だな、お前が俺の看病するなんて」
「いくら自他共に認める嫌なヤツの俺だって病人には優しくするさ…さあ、薬飲んでまた寝ろよ、
すぐよくなるさ」
ふと、思い出した、ケロロが5月病になった時も、コイツは寝ずに治療していたし、
タママがお菓子の食べすぎでお腹が痛いと訴えてきた時も、
薬を処方していた。
タママが「お薬は苦くて嫌です」と言うと
「そう言うと思って、イチゴ味にしておいたぜ」
タママは「ありがとうですぅ」と言って薬を飲んだ。
次の日、
「すっかり良くなりました。さすがクルル先輩」
「おだてたって何も出ねえぜ」とクルルは嫌味に笑った。

小隊のメンバーだから、こうして面倒をみてくれているのか。
そうだった。いくら犬猿の仲で、ケンカばかりとはいえ、異星でたったの5人。
だから…。何故か胸にかすかな違和感が…。

「先輩、なんか、言いたいことがあったら風邪が治ってからじっくり聞いてやるから、
ほら一口食べて」とクルルに言われ、小さく切ったスターフルーツを口にした。
瑞々しい甘い香りが口に広がる。乾燥した喉に果汁が染みて、
少し気分が良くなった。

こんな風に優しくされたのは初めてだった。
いつもと違う態度に戸惑っている。礼が言いたいが素直に「ありがとう」の
セリフも出ない。
クルルは
「薬は対症状のものだから、即効性はないけど、体が楽になるほうがいいだろう…」
と薬を出した。
もらった薬を飲むと昨日と同じように眠くなり…、
とりあえず次に起きてから考えることにした。目を覚ましてから、体が良くなってから
また考えようと目をつむった。




  後編へ続く
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伍長さん目線で…。
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