休暇(後編)



ホテルは空いていて、一番いい部屋は空いてなかったが、それでも個室が3つあるスイートが取れた。
最上階にある部屋からは青い海が一望できた。
「すごいですね」
「ああ、なかなかいい眺めだ」
「でも、どうして同じ部屋なんですか?」
「え、だっていつも部屋二つとっても結局、一つしか使わないし、意味ないだろ」

少佐と任務のために出かける時は、いつも別々の部屋を取ったが、結局遅くまで次の日の
打ち合わせをしていて、そのまま同じベッドで寝ることが多かった。


豪華なデスクの一つに早速、ノートパソコンを広げ、少佐は仕事を始める。
「喉乾いたから、なんか頼んで」
それだけ言うと、黙々とパソコンに向かっていた。
「私を信頼しているんですか?」
「どういう意味だ?」
「一緒に泊まっても何もしないと?」
「事実してないだろ」


確かに少佐と私は護衛と上官の関係だけで、
それ以上にお互い踏み込んでこなかった。でもそれは表向きはだ。
ずっと以前から、気になっていた。

権謀術数が蔓延る上層部を手玉に取り、いつも自分に有利になるよう物事を運んで行く。
その常人には理解できないほどの有能さが時に訳もなく苛立ちを感じさせた。
何でも分かっているような冷めた表情を狂わしてみたいとか、そんな暗い欲望が
自分に芽生え始めたのは何時頃だったのか。


相変わらず、驚異的なスピードでキーボードを打つ音が部屋に響く。
その左手をとる。
「仕事の邪魔はするなよ」
「休暇だと言ったのは少佐でしょう」
「わかった。このシステム組んだら、レストランに行って早めに食事でも取ろうか」
少佐は右手で入力を続けながら、こっちを見る。
片手で、キーボードを見ないで次々入力してると感心する。
「ホテルの2階にもと三ツ星レストランのシェフが腕をふるうレストランがあるって今見たパンフに書いてありました」
「悪くないね」

「あ、今、システム保存してたでしょ、終わりでいいですか?」
「いや、終わってないー」
少佐は慌てて、マウスを使い別のウインドウを開こうとしていたが、
「待てませんね」と
言うと力ずくで床に押し倒した。


「いいかげんにしろ、ふざけるな」
本気で怒っているようだった。
「ふざけてません。ずっと前からこうしたかった」
口づけて一方的に会話を終わらせた。



  続く
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次は18禁かもしれません。
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