午後




二人でたまにラボで食事をするようになった。
だいたい俺のほうから、
「多めに作ったから食べにこないか」と誘い、
一緒にランチを楽しんだ。
「この間の最新武器コレクションで、こういうのが載っていた」とか、
「訓練室の新しいプログラムを考えてみたんだが」とか、
色気のない会話が中心だったが、俺は満足していた。
俺様の作った料理(ほとんどカレーかボルシチだが)を食べてくれ、
一緒に他愛のない時間を過ごすのが楽しかった。


「だれかラボにきてたの?食器が多いね」
その日の午後、二人分の食器を食器洗浄機に並べていると、
急に睦実がペンの調子が悪いからとラボに来た。
「ギロロ先輩と昼食べながら、最新武器コレクションについて熱く語ってたんだぜ」

「相変わらず片思いしてるんだ。青春だな」
「いいだろ」
ラボに置いてある薬品の瓶を眺めながら、
「それでいいわけ?素直じゃないな」
と睦実は言った。

「余計なことを言うなよ。ペン直してやらないぜ」
「いや、友人としてのアドバイスをと思って」
「たかだか十数年しか生きていない地球人のお前が、この俺様にアドバイスって、
あり得ないだろう」
「これでもラジオで恋愛相談に乗っているし、そこそこ恋愛経験もあるよ、おれ」
「ふん、それで」
「我慢してると辛くなるだけだよ」
「好きならもっともっと気持ちを伝えないと、そんなに嫌われるのが怖い?」
睦実は意外など、鋭い。地球人にはもったいないなと思う。
「お前、本気で人を好きになったことあるか?」
「え?」
「いいか、本気で好きになればなるほど臆病になるんだぜ」
睦実が驚いていた。俺だって自分の発言に俺らしさの欠片もないと感じる。
宇宙一の天才がまるで中学生の恋愛観だ。

「難しく考えすぎだよ」
睦実は持っていた薬品の瓶を棚に戻す。
「もっと気楽に考えたら」
「それができれば苦労しないだろ、睦実、ペンは直しておいてやるから、
用がないならもう帰れば」
「冷たいな、まあ3時から打ち合わせあるし、帰るよ。またね、グッドラック!」

おっせかいで無責任な友人は、そう言うとラボから出て行った。

「気楽にね…」
いつものようにモニターに電源を入れると日向家の庭が写った。
先輩はいつものブロックに腰掛け、猫をなでている。

これまで気楽に生きてきたつもりだけど、どこで間違えたのだろう。
「まったく猫がうらやましいぜ」

小さく温かい生き物になってみたい。
猫になって、何も考えず、そばにいられたらいいのに。
こんなに苦しく悩む日々が続くのなら、
キスしたいとか触れたいとか、あたりまえの欲求を封じて、
猫になって、ただそばにいたいと思う。





  END
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もし似たようなネタがあったら
すみません。でも猫になりたいなとか、
私もよく思います。
睦実くんはアニメ229話が良かったので、
一度書いてみたかったです。
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